カレー作りで一番のボトルネックは玉ねぎだと思う。特にスパイスカレーを作ったことがある人ならよく分かるはずだ。「飴色になるまで炒めた玉ねぎ」、あの作業だ。

あんなものを作れるのは時間に余裕のある貴族か料理人くらいだと思っている。でも、美味しいスパイスカレーを作りたい。少なくとも、スパイスカレーでは玉ねぎの原型を残すのは避けたい。豆カレーなら豆、キーマなら挽肉など、主役になる食材の食感をしっかり主張させたいからだ。それ以外の食材はあくまで引き立て役であるべきで、玉ねぎも例外ではない。
では、あの飴色玉ねぎを短時間で作るにはどうすればいいだろうか。そのアプローチを考えるためには、まず玉ねぎが飴色になるまでの過程を想像し、どんな原理が隠れているのかを理解する必要がある。
飴色玉ねぎとは、玉ねぎを極限まで炒めて水分を飛ばし、同時に繊維を崩してペースト状にしたものだ。単純に水分を抜くだけだと、ただ乾燥した塊ができるだけで美味しくない。ポイントは「炒めながら」水分を飛ばすことだ。水分には玉ねぎの旨味や栄養も含まれるため、できるだけ逃したくない。
そこで理想的なのは、玉ねぎの果肉と水分を適度に分離させてから炒める方法ではないかと思った。その分離を手軽に実現するのに最適なのが「電子レンジ」だ。実際、ウェブ上でリサーチすると、電子レンジで玉ねぎの水分を飛ばし、柔らかくしてから炒めるという時短レシピがいくつか見つかった。このアプローチ自体は間違っていないようだ。
今回は実際に電子レンジを使って飴色玉ねぎの時短レシピに挑戦してみた。玉ねぎ6個分を一度に処理し、数日分のスパイスカレー用グレービーを作る計画だ。
まず、600ワットの電子レンジで5分加熱したが、サランラップ越しに触ってみるとあまり変化がなかった。そこで追加で5分、合計10分加熱することにした。するとレンジ加熱中に玉ねぎから成分が出たせいか、ラップがふわふわと膨らんで浮き上がってくる現象が起きた。これは良い感じに水分が抜けている兆候かもしれない。
10分加熱した時点でもう少し水分が抜けそうだったので、実験のつもりで合計15分まで延ばしてみた。

15分レンジにかけた玉ねぎは、予想以上にいい感じになっていた。写真ではわかりづらいかもしれないが、かなり湯気が立って透明感が増しており、これは成功の兆しが見えてきた。
次はフライパンで炒めるフェーズだ。炒め始めたのは9時43分ごろ。この玉ねぎの量で、もし20分ほどで飴色に到達すれば、大幅な時短となるだろうと期待しつつ作業を進める。

炒め始めて約10分経過すると、かなり色が変わってきた。この時、玉ねぎの水分が完全に飛ばないように、あらかじめ煮出しておいた玉ねぎの皮の出汁を少しずつ継ぎ足した。この方法のおかげで、単純に炒めるよりもきれいな色がついている気がする。

結局、最終的に約30分ほど炒めた。写真を見てもらえばわかる通り、かなり美味しそうな飴色玉ねぎに仕上がった。欲を言えばもう少しだけ炒めて完全なペースト状にしたかったが、時間的にも限界だったので今回はここで完成としたい。

出来上がったグレービーは、ラップで小分けにして冷凍すれば1ヶ月ほど保存可能だ(おそらく1週間も経たず食べきってしまうと思うが)。保存したグレービーは、キーマカレーなら炒めた挽肉とヨーグルトと一緒に溶かして仕上げるなど、さまざまな料理に応用できるので、ぜひ試してほしいと思っている。


